About Treatments and Procedures
寛骨臼回転骨切り術(MIS)は、股関節の「受け皿」である寛骨臼(かんこつきゅう)を骨切りして回転させ、大腿骨頭のかぶり(被覆)を増やして荷重の偏りを改善する“関節温存”手術です。MIS(低侵襲手技)では、皮膚切開や筋肉の剥離をできるだけ抑える工夫を行い、術後の痛み・出血・回復負担の軽減を狙います。目的は痛みの軽減だけでなく、軟骨への過度な負担を減らして変形性股関節症の進行を遅らせることです。
①鼠径部(足の付け根)の痛み
②長く歩くと痛む・疲れる
③立ち上がりや階段で痛む
④運動後に痛みが増える
⑤可動域制限(靴下が履きにくい、あぐらがつらい)
などが代表的です。進行すると跛行(びっこ)や、日常生活動作(育児・家事・仕事)での支障が強くなります。
主な対象は臼蓋形成不全(股関節のかぶりが浅い状態)に伴う痛みや、初期〜中等度の変形性股関節症です。かぶりが浅いと股関節の接触面が小さくなり、荷重が一点に集中して軟骨や関節唇が傷みやすくなります。寛骨臼回転骨切り術は、軟骨がまだ保たれている段階で行うほど、関節温存のメリットが得やすい一方、末期変形では効果が限定され人工股関節の適応となることがあります。
①問診(痛みの部位・活動での増悪・生活障害)
②診察(可動域、跛行、股関節の誘発痛)
③画像検査
で総合判断します。基本はX線で被覆の不足や関節裂隙(軟骨の残り)を評価し、必要に応じてCTで三次元的な骨形態、MRIで軟骨・関節唇の状態を確認します。手術適応の根拠は、痛みの原因が被覆不足による荷重不均衡であること、かつ関節裂隙が一定程度保たれ、可動域が確保されていることなどを総合して判断します。
まずは保存療法(活動調整、体重管理、内服・外用、理学療法、股関節周囲筋〔特に臀部筋〕と体幹の強化、動作指導)を行います。これでも痛みが続き、生活の質が落ちている一方で、画像上は関節温存が見込める場合に本術式を検討します。骨切り術は「痛みを取る」だけでなく、荷重環境を整えて将来の人工股関節を先延ばしする狙いがあります。
全身麻酔下に、寛骨臼の周囲を骨切りして寛骨臼を回転(移動)させ、大腿骨頭のかぶりを増やした位置で固定します(一般にスクリュー等で固定)。MISでは、筋肉の損傷を抑える進入や展開の工夫を行い、術後回復の負担軽減を目指します。術後は骨癒合を待つため、一定期間の免荷〜部分荷重を守りつつ、可動域訓練→筋力→歩行へ段階的に進めます。合併症として感染、出血、血栓、神経障害、骨癒合遅延・偽関節、関節のこわばり、残存痛などがあり、術前に効果とリスク、回復期間(リハビリの重要性)を十分説明したうえで適応を決定します。