About Treatments and Procedures
椎弓形成術は、主に頚椎(首)で行われる手術で、脊髄の通り道(脊柱管)が狭くなって神経が圧迫されている状態に対し、背骨の後方にある骨(椎弓)を“開いて広げる”ことで、脊柱管を拡大し脊髄の圧迫を解除する治療です。骨を大きく取り除く(椎弓切除)よりも脊柱の安定性を保ちやすく、複数椎間にわたる狭窄に対応しやすいのが特徴です。目的は、神経の圧迫によるしびれ・歩行障害などの進行を止め、可能な範囲で症状改善を図ることです。
①手のしびれ・細かい作業のしにくさ(箸が使いにくい、ボタンが留めにくい)
②手足のこわばりや力の入りにくさ
③歩行がふらつく/つまずきやすい
④階段で下りが怖い
⑤排尿の切迫感や失禁などの膀胱直腸障害(重症例)
⑥首〜肩の痛み
がみられます。症状は徐々に進行することもあれば、転倒などの軽い外傷をきっかけに悪化することもあります。
主な対象は、頚椎症性脊髄症(加齢変化で骨棘や椎間板・黄色靭帯の肥厚が起こり脊髄が圧迫される)と、後縦靭帯骨化症(OPLL)です。いずれも脊髄が慢性的に圧迫されることで、手の巧緻運動障害や歩行障害などの“脊髄症”を起こします。狭窄が複数の高さに及ぶ場合や、前方からの圧迫要素だけでなく後方要素も関与する場合に、後方から広く除圧できる椎弓形成術が選択されやすくなります。
①問診(しびれ、歩行、排尿、症状の進行)
②神経学的診察(筋力、感覚、腱反射、病的反射、手指巧緻テスト、歩行評価)
③画像検査
で行います。MRIは脊髄圧迫の部位と程度、脊髄内の変化(高信号など)を評価する中心検査です。CTは骨化症や骨形態の評価に有用です。手術を検討する根拠は、画像で脊髄圧迫が明らかで、かつ脊髄症状(巧緻障害・歩行障害など)がある、または進行していることです。特に脊髄症は放置で改善しにくく、進行すると回復が限定されるため、時期の見極めが重要です。
軽症では、内服(鎮痛薬・神経障害性疼痛薬)、理学療法、生活指導、装具などの保存療法を行います。ただし、脊髄症がはっきりしている場合は保存療法のみで十分な改善が得られにくく、症状の進行抑制と神経回復の可能性を考えて手術が選択されます。手術の主目的は「脊髄の圧迫を解除して、悪化を止める」ことで、症状の回復度は、圧迫の期間や脊髄のダメージの程度に左右されます。
全身麻酔下にうつ伏せで行い、首の後方を切開して椎弓を露出します。椎弓に溝を作り、片側を支点に“開く”ことで脊柱管を拡大し、開いた状態を保持するために小さなスペーサーやプレートなどで固定します(術式は施設により差があります)。術後は早期離床・歩行訓練を進め、首の安静や装具の使用を組み合わせることがあります。合併症として、感染・出血、神経症状の一過性悪化、C5麻痺(肩が上がりにくくなる)、髄液漏、頚部痛、可動域低下、術後のアライメント変化(後弯)などがあり、術前に十分な説明が必要です。術後のリハビリと姿勢・筋力の再獲得まで含めて、日常生活機能の回復を目指します。